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【2】シャー・ルク・カーン物語 [シャー・ルク・カーン物語まとめ]

インド国内に残ったイスラム教徒はヒンドゥー過激派からの迫害を受けました。デリー大学で学んでいたミールも標的となり、ミールのクラスメートたちは、ミールを守るため寮でミールのベッドの周りに輪になって眠ったそうです。

21歳になったミールは弁護士の資格を得て大学を卒業しましたが、弁護士にはなりませんでした。独立闘士の一人として建国前後の政治活動に深く関わったのに、どんなに誘われても政治家にもなりませんでした。ミールは夢見がちで温厚、理想化肌であまりに誠実な人でした。ユーモアのセンスがあり、人に好かれましたが、内向的で詩人に相応しいような性格でした。人を出し抜いたりうまく立ちまわったりすることができなかったので、いくつか試みた事業にも成功しませんでした。

25歳頃、息子と同様映画俳優を目指してムンバイへと旅だったこともあります。ちょうど制作中だった大作映画Mughal-E-Azamのオーディションを受けたのです。政治活動をしていたときには、ミールの美しさに惹かれ政党の女性支持者が倍増したほどでしたが、映画のオーディションには合格せず、エキストラの列に並ぶように言われました。ミールは同郷の有名人カプール一族やディリップ・クマールらのコネに頼るにも、下積みの苦労を続けるにもあまりに誇り高かったのでしょう。いくつか映画出演を試みましたがかなわず、1年ほどムンバイで過ごしたあと、健康を損なってデリーに戻っていったのでした。

29歳のある日、友人とデリーの街を散歩していたミールは、インド門周辺で自動車の大事故に遭遇します。車は仰向けになり、這い出した運転手は後部席の客を残して逃げてしまいました。ミールと友人は大破した自動車から女性たちを助け出します。その一人が燃える瞳を持つ16歳の美少女ラティーフ・ファティマ・ベグムでした。
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《続く》

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