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【7】シャー・ルク・カーン物語 [シャー・ルク・カーン物語まとめ]

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ミールの教育はあくまでもスピリチュアルなものでした。お金が丸っ切り無かったわけではなくても、おもちゃを買ったり動物園に連れて行ったりはしませんでした。例えば、交差点のループの真ん中に連れて行って、何時間も色々な車を見せたりしました。

「シャールク、あれをご覧。こうして色々なものを観察するんだよ。お前が父さんと同じように観察することができたら、こうして見ている何でもない物が、ワクワクするほど面白いということが分かるはずだ。」

まだ幼いシャールクに、小さな5パイサ硬貨をくれて一人でバスに乗せ、自分は少し遅れて付いて行ったこともありました。

「これを車掌さんに渡して、10個めの停留所で降りるんだ。大丈夫。父さんが後ろにいるからね。」


小さなシャールクにとって、これがどんなに胸弾む冒険だったことでしょう。シャールクは父親から、日常の些細なものをよくよく観察すること、それらをあたかもゲームのように楽しむことを教わりました。このことは彼の演技の力にも役立ったと思います。シャールクの物真似のうまさには定評があります。普段のインタビューを見ていても、誰それがこう言ったという話をするとき、その人物の声色や仕草までも写しとっていて、彼の観察力の鋭さを示しています。TVのクイズ番組KBCをやったときに、市井の人々をよく観察する機会があり、これがRab Ne Banna Di JodiでのSuriの役作りに大きく役立ったと言っています。一方でミールはこのようにも言いました。

塩や胡椒ばかり見つめていては、月に行こうという発送は生まれない。

ミールは毎朝シャールクのためにミルクを温めてやっていました。ある時からそれをやめ、代わりに早朝二人で牛乳屋さんまで散歩するようになりました。シャールクはそこで、蛇口から出る絞ったばかりのミルクを手でうけて飲みました。

夜には、飼っている犬がわんわん鳴くと、シャールクは通りに飛び出しました。角まで走っていくと、背の高いミールが仕事から帰っくるのを出迎え、ひったくるように父のカバンを持つと、二人で家まで帰るのでした。

優しくて紳士で大きくて賢いミールをシャールクは尊敬し、「お父さんの様になりたい」と心からそう願っていました。

ファティマはもっと現実的でした。ある日彼女は1年生のシャールクが、ヒンディ語の書取で2点を取ってきたのを見て言いました。

「10点満点取ってきたら映画に連れて行ってあげるわ。」

シャールクはヒンディ語に力を入れていませんでした。学校で学ぶ英語の方が上等でかっこいい気がしていたのです。でもファティマのこの言葉がシャールクに火をつけ、以来彼はヒンディ語に熱を入れ始め、高学年になってからはヒンディ語で優等賞を取るまでになったのです。

小さなシャールクが、生まれて初めての映画館で、ファティマのバッグの上にちょこんと座って見た映画は、後に彼と共に何本も名作を撮ることになる名匠ヤーシュ・チョープラ監督のJoshilaでした。

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《続く》

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