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【4】シャー・ルク・カーン物語 [シャー・ルク・カーン物語まとめ]

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ミールとファティマは夜と朝ほどに違っていました。背が高く穏やかで色白のミールと、小柄で肌も濃くはちきれそうなファティマ。外見ばかりではありません。シャールクによると、二人の違いはこういう風だったそうです。「母は例えばパーティに行くと、会場についた瞬間におしゃべりを始め、喧嘩をし、ジョークを飛ばしてたちまち輪の中心になってしまうような人だった。一方父は隅っこに座って自分なりに楽しみ、そっと帰っていくタイプだった。」
面白いのはシャールクの中に、両方の性質がきれいにブレンドされているということです。

さて、ついに結婚できたミールとファティマですが、経済的には楽ではありませんでした。当時のミールはトラック輸送の会社を営んでいました(映画Chalte Chalteは色んな意味でシャールクの父母を思い出させます)。ところが共同経営者に裏切られ、会社が立ち行かなくなってしまいます。その後何度もビジネスに失敗するミールですが、どんなに困窮しても裏切られても自分自身は誠実であり続け、人を信じることもやめませんでした。

裕福なエンジニアの家庭で不自由なく育ったファティマと、物欲も名誉欲もほとんどないミールの組み合わせです。事実上の生活を仕切っていたのは、一回り以上年下のファティマでした。ファティマはそんなミールを「誠実なる落伍者 (honest failure)」と呼びました。ちなみにシャールクはこれを「成功した落伍者(successful failure)」と言い換えています。事業家としては失敗したかも知れないけれど、おかげで子どもたちと過ごす時間はたくさんあり、大切な事をしっかり伝えることができたから、父親として人間として成功したというのです。

1960年には長女シェナーズ・ララ・ルークが誕生。そして5年後の1965年11月2日にはわれらがシャー・ルクが誕生します。それぞれ「高貴なチューリップの頬」、「王者の顔」という意味のこの名を、ミールはペシャワルで飼っていた馬の名前から取ったと言ったそうですが、これもミール流の冗談かもしれません。

シャールクは難産でした。生まれたとき首の周りにへその緒が幾重にも巻き付いていて、悪くすると命を落とす危険性もありました。無事に生まれたシャールクを見て看護婦さんは言いました。「この子にはきっとハヌマーンの祝福があるわ。」

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《続く》

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